記事をご覧いただきありがとうございます。データライド中の人です。
このブログでは、日々さまざまなWebサイトやチャット導線を見ている中で感じたことを、運用者目線で少しずつ発信しています。
「FAQは多い方がユーザーの役に立つ」。
チャットボットの初期構築では、多くの担当者がこの考え方を持ちます。私たち自身も例外ではなく、初期段階では「とにかく網羅性を高めること」が正しいと信じていました。
しかし、実際に運用を開始すると、想定とはまったく異なるユーザー行動が見えてきました。情報量を増やすことが、必ずしもユーザーの自己解決につながるわけではなかったのです。
FAQを網羅したのに離脱率が高かった
初期構築では、問い合わせ内容をほぼ網羅できるよう、数十〜数百のFAQをシナリオに組み込みました。「これだけあれば、ユーザーは迷わず必要な情報にたどり着けるはずだ」と考えていたのです。
しかし、実際のログを見ると、チャットに流入したユーザーの多くが途中で離脱していました。しかも離脱ポイントは「FAQ一覧を提示した直後」や「カテゴリ選択の段階」で発生していたのです。
つまり、ユーザーはチャットにアクセスしてくれているにもかかわらず、必要な情報にたどり着く前に諦めてしまっていたということです。この結果は、私たちの想定を大きく裏切るものでした。「情報を増やせば解決率が上がる」という前提そのものが誤っていたのです。
原因は「探せない」ことだった
ログを詳細に分析すると、離脱の原因は非常にシンプルでした。ユーザーは、自分の問い合わせ内容がどこにあるのか分からなかったのです。
- 選択肢が多すぎて、どれを選べばよいか判断できない
- カテゴリー名が似ていて違いが分からない
- 自分の悩みに近い項目を探すのが面倒になる
結果として、情報量は増えているにもかかわらず、「探す負担」も同時に増えてしまい、ユーザーのストレスが高まっていたのです。チャットは「探す場所」ではなく「案内される場所」であるべきなのに、私たちはユーザーに“探す作業”を強いてしまっていました。
想定以上に利用された「自由入力」
さらに興味深かったのは、シナリオを進めずに自由入力を利用するユーザーが非常に多かったことです。私たちは当初、自由入力は「最終手段」だと考えていました。しかし実際には、ユーザーは積極的に自由入力を使っていました。
その理由は明確です。
「自分の言葉で質問したい」
「選択肢を読むより聞いた方が早い」
FAQの中から探すより、自分の状況をそのまま伝えた方が早いと感じるユーザーが多かったのです。スマホで長いリストを読む負担も大きく、カテゴリの境界が曖昧なため、自分の悩みがどこに属するのか判断できないケースも多く見られました。
つまり、ユーザーは必ずしも「用意された選択肢から選びたい」とは思っていません。むしろ、“聞いた方が早い”という感覚で自由入力を選んでいたのです。この結果から、「選択肢を充実させること」と「使いやすいこと」はまったく別の概念であるということを強く実感しました。
重要なのは、情報量ではなく導線設計
この経験を踏まえ、現在ではFAQを網羅することよりも、ユーザーが迷わず目的の情報へ進める導線設計を重視しています。
- 最初は目的別の大きなカテゴリだけを表示する
- 会話を進めながら徐々に絞り込む
- 自由入力への導線を分かりやすく設置する
このような導線設計にすることで、ユーザーが迷う場面を大幅に減らすことができました。結果として、FAQの数を減らしたにもかかわらず、自己解決率はむしろ向上したのです。
チャットは「探させる」のではなく「たどり着かせる」もの
チャットボットは、多くの情報を掲載することが目的ではありません。ユーザーが最短で目的の情報へたどり着けることが重要です。
FAQを増やせば自己解決率が上がるとは限りません。むしろ、選択肢が増えることで離脱につながるケースもあります。
運用ログを見ると、ユーザーがどこで迷い、どのような行動を取っているのかが明確に分かります。改善のヒントは、ユーザーの行動データの中にあります。
チャット改善では、
「何を追加するか」
「何を減らすか」
「どう導くか」
という3つの視点を持つことが、より良いユーザー体験につながります。チャットは「情報を並べる場所」ではなく、ユーザーを目的地へ案内する“導線”そのものなのです。
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